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05 September 2017 / Movie

フレンチ・カルチャーのアイコンを描く伝記映画

9月に入り、フランスの芸術シーズンもスタート!
フランス映画も話題作が目白押しですが、その中からフランスのカルチャー・アイコンをモチーフにした作品を2本ご紹介。


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"Le Redoudable"(ミシェル・アザナヴィシウス監督)は、映画監督のジャン=リュック・ゴダールと17歳も年の離れた妻で女優のアンヌ・ヴィアゼムスキーという、1960年代後半のフランス映画界の有名なカップルを描いた作品です。


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本作はアンヌ・ヴィアゼムスキーが2015年に発表した自伝小説"Un an après(1年後)"がベースになっており、彼女の視点で物語が紡がれています。

1966年に出会った2人は1年の交際期間を経て、『中国女』撮影後の1967年7月にスイスで極秘結婚。しかし1968年の五月革命という状況の中、商業映画から離れて政治化していくゴダールに対し、彼のシニカルな性格と病的な嫉妬に耐えられなくなっていくアンヌの心が、さまざまな出来事を通しながら冷めていく過程を描いています。


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ゴダール役に挑戦したルイ・ガレルは美形俳優の面影を全く消して本人になりきっていますが、ゴダール作品のファンと自負している彼の演技は役柄に人間味を与えています。そしてアンヌ役を演じるのはmiu miuのイメージモデルも務めたことがあるステイシー・マーティン。

当時20歳になったばかりのアンヌが見せる60年代ファッションは シンプルなジャストサイズのセーターにミニスカートやワンピース、そして作品の後半では70年代のヒッピーテイストが感じられるプリントシャツやベルボトムジーンズ姿も。

常にジャケットを着てメガネをかけたゴダールとの年齢の差がファッションからも伺うことができます。またインテリアもこの時代のゴダール作品さながらに原色を貴重にしたポップなカラーやミッドセンチュリーの家具が登場し、見どころ満載です。


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また2人の友人役で登場するミシェル・ロジエは、雑誌ELLE創刊者の娘で、バカンス用のスキーウエアや水着のブランドを立ち上げたことで知られています。演じるのは監督の公私にわたるパートナーであるベレニス・ベジョ。


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コメディタッチで始まるこの作品は徐々にアイロニーが混ざり込み、悲しい結末に。

タイトルは作品の描かれている当時に話題になった原子力潜水艦の名前から取っていますが、「戦慄」「恐るべきもの」「耐えられないもの」という意味があり、徐々に破綻していく2人の姿がこの言葉に集約されています。


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俳優でもあるマチュー・アマルリックの監督作"Barbara"は、そのタイトル通り、20世紀のフランスのシャンソン界を代表する歌手バルバラがテーマ。

バルバラは「黒いワシ」などのヒット曲を残し、囁くような独特の歌い方で人気を博しましたが、 今作は通常の伝記映画ではなく、バルバラの映画を作ろうとする映画監督と彼女を演じる女優が次第に現実とフィクションの境界線を失っていく物語になっています。


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作品の中でも監督役を演じているマチュー・アマルリックと女優のジャンヌ・バリバールは、かつてはカップルで 、2人の子供ももうけた間柄。別れた後も良好な関係を続けて完成した作品は、お互いへの愛情と信頼によって生まれた賜物と言えるでしょう。


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ジャンヌ・バリバールとバルバラはとても似ているのですが、これまでにも映画だけではなく舞台でもこの大歌手の役をオファー されていたそうです。

ある日、以前に一緒に作品を作ったことのある映画監督がこれまでとは違ったタイプのバルバラの伝記映画を作ることを提案し、彼女は初めて出演を承諾しましたが、残念ながら頓挫。しかし企画だけが残り、彼女自身がプロデューサーと共にマチュー・アマルリックに監督をすることを依頼したそうです。


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衣装を担当したのはフランソワ・オゾン監督作品で知られ、「ルノワール 陽だまりの裸婦」(2012年、ジル・ブルドス監督)でセザール賞を受賞したパスカリーヌ・シャバンヌ。

バルバラのカリスマ性とバリバールが放つ強烈な個性がゴージャスなルックからも放たれています。


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作品の中でバルバラの人生が直接的に語られることはないのですが、全編が彼女の音楽で散りばめられ、現存している映像も挿入されています。

やがて観客自身も本物のバルバラと演じている女優の見分けがつかなくなり、バルバラの生きる世界に迷い込んだような気分に。偉大なアーティストに対する新しい形のオマージュと言えるでしょう。



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Written by Yuko Tanaka

パリ第1大学で映画理論を学び、
現在は映画関係中心の翻訳・執筆・コーディネーターとして活動中。
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