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30 May 2017 / Movie

新しい時代の幕開けと映画が発信するメッセージ!第70回カンヌ国際映画祭

CANNES-2017-POSTER.jpgBronx agence (Paris). Photo : Claudia Cardinale © Archivio Cameraphoto Epoche/Getty Images


イタリアの名女優クラウディア・カルディナーレがツイストするポスターで出迎えたカンヌ国際映画祭は今年で70周年。
インターネットのみで配信されるNetflixの作品2本がコンペに選ばれて物議を呼び、ヴァーチャル・リアリティのインスタレーションが開催され、パルムドール(最高賞)を獲得したデヴィッド・リンチ監督とジェーン・カンピオンのテレビドラマが上映されるなど、従来の映画の概念の枠を超えた新しい時代を感じさせる内容となりました。


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公式コンペティション部門でパルムドールを獲得したのはスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の"The Square"。
現代美術館のキュレーターを主人公にアートの世界をシニカルな笑いを込めて描いたコメディで、小話を積み重ねながら物語を構築していくスタイルの作品。オストルンド監督はコンペに初選出された今作で快挙を成し遂げました。


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グランプリはフランスのロバン・カンピヨ監督の"Beats per Minute"。
まだエイズに偏見のあった90年代前半に、政府の対応の遅さや新薬の開発問題などと闘ったACT-UPのメンバーの姿を捉えながら、2人の登場人物の間に生まれる愛を描いた感動的な物語です。
新たにエイズ患者が増えているこの時代に見るべき作品と言えるでしょう。


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監督賞はアメリカのソフィア・コッポラ監督に。
"The Beguiled"はドン・シーゲル監督の1970年代の作品のリメイク。南北戦争中に負傷した兵士を寄宿舎で介抱するさまざまな年齢の女性たちの物語ですが、オリジナルとは違って視点を女性に移しています。
ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、エル・ファニングを迎え、同監督ならではの世界観を映像化し、その力量が認められた形となりました。


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女優賞はドイツ映画"In The Fade"でネオナチズムの信奉者によるテロで愛する夫と息子の命を奪われた女性を熱演したダイアン・クルーガーに。
フランスでキャリアをスタートし、国際的なスターになった彼女にとって初めての母国語劇だけに、その喜びも一層増したことでしょう。


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男優賞は"You Were Never Really Here"のホアキン・フェニックスに。
戦争のトラウマを抱えながら母の介護をする元兵士が、依頼された監禁少女奪還作戦で政治の渦に巻き込まれていく姿を心理的に描いており、イマジネーション豊かな演技が重要な作品でした。


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審査員賞は下馬評の高かったロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の"Loveless"。
お互いに既に新しいパートナーを見つけて離婚する夫婦と彼らに省みられない息子の失踪を扱った辛辣なドラマで、家族のあり方について見るものの心を揺さぶる作品でした。


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脚本賞はギリシャのヨルゴス・ラルモンティス監督の"The Killing of The Sacred Deer"とリン・ラムジー監督の"You Were Never Really Here"の2作品がダブル受賞。
ギリシャ神話をベースにした"The Killing..."はある少年から呪いをかけられた有名外科医の家庭を描いた不条理ドラマでした。


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今年、特別に設けられた70周年賞には、特別上映されたジョン=キャメロン・ミッチェル監督の"How to Talk to Girl at Parties"を含めて4本に出演したニコール・キッドマンに。
今回の映画祭は彼女の年だったと言っても過言ではないでしょう。


今年のカンヌ国際映画祭は昨今のテロを踏まえた厳重な警戒態勢の中で行われましたが、期間中にマンチェスターで事件が発生し、映画祭でも黙祷が捧げられました。
他の部門を合わせても民族問題、LGBT、移民対策など、政治および社会的なテーマの作品が多く並んだことも大きな特徴でしたが、映画作品を通して、世界が置かれている状況を提示して見るものに考えさせる、芸術が持つ可能性はこれからも広がっていくことを感じました。

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Written by Yuko Tanaka

パリ第1大学で映画理論を学び、
現在は映画関係中心の翻訳・執筆・コーディネーターとして活動中。
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